カルダノのISPO(Initial Stake Pool Offering)
カルダノはトランザクション承認にプルーフ・オブ・ステーク(PoS)を採用しています。
サーバーを運用して実際に承認作業を行うバリデーターとそのバリデーターを指名するデリゲーターが存在します。
バリデーターには一定のITスキルやサーバー構築・運用スキル、損益計画が求められるため、大多数の人はADAをステーキングする(預ける)だけで済むデリゲーターになります。
カルダノの場合、バリデーターがステークプールと呼ばれるADAを預ける場所を作り、デリゲーターがそのプールにADAを預けます(委任します)。
そして、バリデーターはデリゲーターのADAが入ったステークプールを運用します。
バリデーターはネットワークのセキュリティを維持する見返りとしてステーキング報酬(ADA)をブロックチェーンから受け取ります。
そして、デリゲーターは委任した見返りとしてステーキング報酬の一部をバリデーターから受け取ります。
通常、ステーキング(委任)の報酬はADAですが、ADAで受け取る代わりにバリデーターのプロジェクトが発行する独自トークンで受け取ることも可能です。
それがISPO(Initial Stake Pool Offering)です。
ISPOを使用することで、バリデーターのプロジェクトはステーキング報酬のうちデリゲーターに支払うべきADAの一部を資金調達として徴収します。その代わり、徴収したADAの補填としてプロジェクトトークンを配布するということです。
英語ですが、ISPOを簡単に説明した動画がありましたので、共有します(字幕を表示して日本語を選べば大体の意味が分かります)。
ISPOでは必ずしも委任報酬のすべてをADAからプロジェクトトークンに置き換える(ADA0%、プロジェクトトークン100%にする)必要はありません。
ステークプールの設定によっては、ADA50%、プロジェクトトークン50%のように両方を受け取れることもあります。
ISPOはポルカドットのクラウドローンに似た仕組みと言えるでしょう。
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ポルカドットのクラウドローンとの違いは、ISPOには固定のロック期間が存在しないことです。
プロジェクトトークン配布のために、プロジェクトが個別に委任期間を要求することはありますが、ISPOの仕組みとしてはいつでも委任を中止できます。
ISPOはカルダノブロックチェーンの委任機能に組み込まれているため、ポルカドットのクラウドローン同様に、預けたADAを持ち逃げされるリスクがない点も魅力的です。
ISPOの参加方法
①プロジェクトの調査
まずはどのようなプロジェクトがISPOを実施しているのかを知るところから始めます。
ISPOを実施しているプロジェクトをまとめているサイトを探したのですが、「これだ!」と呼べるものはなく、強いてあげればSundaeSwap ISO is Over, What Cardano ISPO is Next?です。
こちらのページはタイトルからしていずれ古くなってしまうでしょうから、結局のところネットを適宜調査しなければなりません。
ツイッターを調べたところ、ながまる氏がスプレッドシートでまとめてくれています。
https://twitter.com/nagamaru_panda/status/1504018984672559109
地道にインターネットやツイッターで「ADA ISPO」といったキーワードで検索するしかないようです。
やや強引な手法ではありますが、カルダノのブロックエクスプローラー「cardanoscan」のプールページで、「変動費」列を降順でソートして、99.0%のプロジェクトを1つずつチェックして探す方法もあります。
ISPOは通常のステークプールの延長線ですから、変動費(=プール側のADA報酬取り分)が100%近いということはISPOの可能性が高いという発想です。
あるいは「cardanoscan」の検索窓で「ISPO」「ISO」等と検索する方法もあります。
2022/3現在ではAADA Finance、Ardana、Genius Yield、FlickTo、Ray Network等がISPOを実施しております(下記サイト参照)。
②ウォレット作成
ISPOプロジェクトのステークプールに委任するには、ウォレットが必要です。
公式ウォレットとしてはフルノードウォレット「ダイダロス(Daedalus)」とライトウォレット「ヨロイ(Yoroi)」の2種類があります。
フルノードウォレットはトランザクション履歴を全てダウンロードすることになるため、大容量のディスクとPCが必要です。他方、ライトウォレットはトランザクション履歴を保持しなくてよいため、すぐに使えて便利です。
通常はライトウォレットのヨロイ(Yoroi)で十分です。
ヨロイ(Yoroi)はブラウザ拡張機能とスマホアプリ、どちらも用意されていますので、ヨロイ(Yoroi)にアクセスしてお好みのものをインストールしましょう。
ブラウザ拡張機能の場合は以下の画面になります。
インストール完了後はピン留めして、ブラウザに常時表示させておくと便利です。
Yoroiウォレットの拡張機能のアイコンをクリックします。
「日本語」を選択して、「次へ」をクリックします。
「利用規約に同意します」にチェックを入れて、「次へ」をクリックします。
カルダノの支払いURLを有効化するか質問されますが、基本的には使わないため、「スキップ」を選択します。
「ウォレットを作成する」をクリックします。
「Cardano」をクリックします。
「ウォレットを作成する」をクリックします。
ウォレット名に好きな名前を入れて、送金用のパスワードを新規入力したら、「ウォレットを作成」をクリックします。
「他人に画面を見られないよう注意してください。」にチェックを入れて、数秒待ってボタンが有効化されたら「次へ」をクリックします。
待っている間にしっかり文章を読んでおきます(そのための待機時間です)。
復元フレーズと呼ばれる暗号鍵が表示されますので、順番通りにメモして保存します。
暗号鍵はウォレット(財布)そのもので、最も重要な情報ですので、絶対に無くさないように大切に保管してください。
暗号鍵(復元フレーズ)を紛失するということは財布を無くすことと同義です。
しっかりメモを取ったら、「はい。書き留めました」をクリックします。
文章をよく読んだ上で2つともチェックを入れて、「確認」をクリックします。
これでウォレットが完成です。
③ウォレットへの入金
ウォレットが作成できたら、入金します。「受信」をクリックします。
「外部」が選択されていることを確認後、「あなたのウォレットのアドレス」に記載されているアドレスをコピーします。
アドレスの右端に書類のようなアイコンがありますが、これをクリックするとアドレスがコピーされます。
ここに記載されているアドレスがウォレットへの入金アドレスです。
カルダノはビットコインと同じUTXO形式のため、イーサリアム等のアカウント形式とは異なり、入金アドレスは都度変わります。
ただ、同じアドレスが使えないわけではなく、同じアドレスを使い回しても問題なく着金します。
プライバシー侵害や個人特定が気になる場合は、使い回さずに新しい入金アドレスを都度使うと良いでしょう。
取引所等から上記の入金アドレスにADAを送金することで、ウォレットに入金できます。
④ISPOプロジェクトのステークプールに委任
入金後、「Delegation List」をクリックします。
ステークプールの一覧が表示されますので、ISPOを実施しているプロジェクトのステークプールを検索窓から検索します。
以下の図はISPOプロジェクトの1つであるGenius Yieldのステークプール名のキーワードである「GENS」を入力してステークプールを絞り込んでいる様子です。
目的のステークプールを見つけたら、該当行の「DELEGATE」をクリックします。
ウォレット残高からトランザクション手数料が引かれた額が自動入力されています。
ウォレット作成時に設定した送金パスワードを入力し、「委任」をクリックします。
ダッシュボードに戻り、右下にステークプールの名前が表示されていれば委任成功です。
なお、ダッシュボードに表示される報酬は1%のADAのみです。99%のプロジェクトトークンはプロジェクトサイト等で別途確認しなければなりません。
Yoroiウォレットではプロジェクトトークンの報酬額は確認できないということです。
また、1つのウォレットで委任できるステークプールは1つまでという制限があります。
2つ以上のステークプールに委任したい場合は、ウォレットを複数作成すれば可能です。
ISPO参加後の出口戦略
①プロジェクトトークン獲得
委任中はISPOプロジェクトのWebサイト等で報酬額を確認します。
ISPOプロジェクトトークン報酬確認例(出典:Genius Yield公式サイト)
既定の委任期間が終了したら、各プロジェクトの指示に従ってプロジェクトトークンを請求します。
ISPOプロジェクトごとに手続きが異なりますので、公式のツイッター、Discord、Telegram等に参加して情報収集しましょう。
②入手トークンの使い方を決める
ISPOの報酬で入手したプロジェクトトークンの使い道を検討します。
主に3つあります。
- プロジェクト内のサービスに使う
- トークンを売却する
- トークンを誰かにプレゼントする
それぞれ説明します。
プロジェクト内のサービスに使う
入手したトークンを各プロジェクトのサービスにそのまま使う方法がまず考えられます。
たとえば、Genius Yield(DeFi)であれば、入手したトークンを原資に運用してさらなる利益を狙えるかもしれません。
プロジェクト内のサービスを使うことで、そのプロジェクトを応援することにも繋がります。
トークンを売却する
「すぐに現金化したい!」という方は売却することになるでしょう。
トークンを取り使っている取引所に送金して、国内取引所で日本円に交換可能な暗号資産(ビットコインやイーサリアム等)に交換します。
そして、それを国内取引所に送金して日本円に交換すれば、現金化できます。
トークンを誰かにプレゼントする
日頃お世話になっている知り合いや友だちにプレゼントしてみるのはいかがでしょうか。
喜ばれると思いますし、それをきっかけにプロジェクトに興味を示してくれるかもしれません。
あるいは、SNSユーザーであれば、フォロワーを増やすためにGiveawayイベントを開催してバラまくという手もあるでしょう。
③委任していたADAの用途検討
ISPOプロジェクトのステークプールにに委任していたADAの用途を検討します。
カルダノエコシステムを引き続き応援するのであれば、新しいISPOプロジェクトの委任に流用しましょう。
気になるISPOプロジェクトがなければ、ADAの総量を増やすために、通常のステークプールに委任することも可能です。
あるいは、別の銘柄に交換したり現金化したりするために取引所に送金してもよいでしょう。
ISPOのリスク
プロジェクトトークンが約束通り配布されるかは不透明
ISPOは既存のステーキングの仕組みを活用しているため、委任したADAはカルダノのブロックチェーンに預けられます。
そのため、委任したADAがISPOのプロジェクトメンバーに持ち逃げされる心配はありません。
ただし、プロジェクトトークンを約束通り配布するかどうかはプロジェクトの信用に依存するため、プロジェクトトークンが配布されないリスクはあります。
その場合、従来のステークプールに委任していれば得られたはずの委任報酬を失うことになります。
偽物のステークプールに委任してしまう可能性がある
悪意のある人物が本物そっくりのステークプールを用意し、そこに間違って委任してしまうリスクもあります。
そのステークプールが本物か否かはステークプール名やプールIDで確認するようにしましょう。
通常、ISPOプロジェクトのWebサイト(プロジェクトのドキュメントページ)にはステークプール名やプールIDが明記されています。
まとめ
カルダノのISPOの説明から始まり、ISPOの参加手順、出口戦略までお伝えしました。
ISPOを活用することでポルカドットのクラウドローンのように様々なプロジェクトのトークンを追加投資することなく手に入れることが可能です。
しかも、クラウドローンとは違ってロック期間が存在しないため、臨機応変に対応できる点も魅力的です。
一方で、ISPO専用の仕組みが用意されているわけではないので、情報収集や報酬確認が不便だったり、偽物のステークプールに委任してしまう可能性があるという課題は残っています。
とはいえ、少額からでも気軽に参加できますので、応援したいISPOプロジェクトがあれば、そのプロジェクトのステークプールに委任してみてはいかがでしょうか?