ビットコイン(BTC)の概要
ブロックチェーンを活用した世界初の暗号資産(仮想通貨)
ビットコインとは、信頼できる第三者機関なしに二者間で直接取引できる、ブロックチェーンを基盤とした世界初の暗号資産(仮想通貨)です。
従来、インターネットにおける二者間の商取引においては信頼できる第三者機関(金融機関)を介在させる必要がありました。
取引は信頼できる第三者機関(金融機関等)を介して行われてきた
第三者機関が介在するということは、その第三者機関のルール(本人確認、取引承認判断、送金タイムラグ、仲介手数料)に従わなくてはなりません。
それらはいずれもコストとなって現れます。
この問題を解決するために、サトシ・ナカモト(匿名)は信頼できる第三者機関なしに直接取引できる方法として、2008年に「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」という論文(ホワイトペーパー)をインターネットに公開しました。
ビットコインの論文(ホワイトペーパー)
この論文では、コンピューター間(Peer to Peer:P2Pと呼びます)のネットワーク技術および暗号技術を組み合わせて生み出されたブロックチェーンと、それを支える経済的インセンティブとしてのビットコインについて説明されています。
サトシ・ナカモトはこの論文をベースにしたビットコインのシステムを開発し、2009/1にリリースしました。
暗号資産市場の誕生の瞬間です。
ビットコインのシステムを使えば信頼できる第三者機関なしに直接取引できるようになるとサトシ・ナカモトは考えたわけですが、稼働初期の一時期を除けば、このシステムは2021/11現在でも問題なく機能しています。
ビットコインのシステムを使えば信頼できる第三者機関なしに取引可能
あらゆる取引所に上場し、基軸通貨として扱われている
ビットコインは最も歴史が長く、最も知名度が高く、最も時価総額が高い絶対的王者です。
「暗号資産と言えばビットコイン」と言っても過言ではないでしょう。
ビットコインは殆どの取引所に上場しており、基軸通貨として扱われます。
ビットコイン(BTC)早見表
名称 | ビットコイン(Bitcoin) |
---|---|
ティッカーシンボル | BTC |
通貨の最小単位 | 1 satoshi = 0.00000001 BTC |
メインネット開始年月 | 2009/1 |
主な用途 | 通貨を目指していたが、現実はゴールドのような価値の保存手段 |
考案者 | サトシ・ナカモト(匿名) |
発行者 | なし |
発行方法 | マイニング(4年ごとの半減期) 50 BTC → 25 BTC → 12.5 BTC → 6.25 BTC(2021/11現在) |
トランザクション速度 | 5 TPS(1秒あたりのトランザクション数) ※VISAは1,700 TPS |
発行上限 | 2,100万BTC |
コンセンサスアルゴリズム | SHA-256を用いたプルーフ・オブ・ワーク(PoW) ※厳密にはナカモト・コンセンサス |
ファイナリティの種類 | 確率的ファイナリティ(決済が覆される可能性が0にならない) |
残高管理 | UTXOモデル |
Webサイト | https://bitcoin.org/ja/ |
ホワイトペーパー | https://bitcoin.org/ja/bitcoin-paper |
エクスプローラー | https://www.blockchain.com/explorer?view=btc |
ビットコイン(BTC)の特徴
取引の承認は10分ごと
取引内容のことをトランザクションと呼びますが、そのトランザクションは都度承認されるわけではありません。
各トランザクションはブロックと呼ばれる1MBを上限とした箱に詰め込まれた後、ブロック単位で承認されます。
その承認間隔(ブロック生成間隔)は約10分になるように設定されています。
取引の承認はプルーフ・オブ・ワーク(PoW)で
取引の承認にはプルーフ・オブ・ワーク(PoW)と呼ばれる方法が使われます。
PoWとは、トランザクションが詰め込まれたブロックと未確定値X(ナンス値)を入力値としてSHA-256方式のハッシュ関数を計算した(暗号処理を施した)際に得られるハッシュ値(32文字の不規則な文字列)が、一定の長さの0が並ぶハッシュ値になるような未確定値X(ナンス値)を探す計算作業のことです。
答えからは入力値を逆算できないため、ナンス値を1ずつ変えながら総当たり的に計算を繰り返して答えの条件に合うナンス値を探し続けます。
つまり、PoWは膨大な数のくじ引き棒が入っていて、その中からたった1本のあたり棒を見つけるようなイメージです。
この作業をネットワーク参加者が一斉に行って誰が一番最初に答えを見つけられるか競争します。
その競争の勝者がブロック承認者となって、ブロックを承認するとともに次のブロックを生成する権利を獲得します。
次のブロックを生成する際には、前ブロックの要約データを含めるようにします。
これによってブロックは鎖状に連結した構造となり、この構造からブロックチェーンと呼ばれるようになりました。
ブロックチェーンのイメージ
PoWの報酬がビットコイン
- ブロック生成報酬
- ブロックに含められた全トランザクション手数料
これらの報酬がビットコインで支払われます。
マイニングで一攫千金?!
マイニングの難易度調整は2週間おきに実施
取引の承認(ブロック生成間隔)は約10分になるように設定されていると書きましたが、PoWの参加者が増えたりマシン性能が向上したりすると、ブロックの承認時間はどんどん短くなってしまい、セキュリティ上好ましくありません。
発行上限とマイニングの半減期
ビットコインには2,100万BTCの発行上限があります。
また、ブロック生成報酬は約4年おきに半減していく仕組みになっており、それを半減期と呼びます。1ブロック50BTCからはじまり、2021/11現在では1ブロック6.25BTCまで減っています。
そのため、ブロック生成報酬はいずれ無くなります。
「そうなったら誰もマイニングしなくなるのでは?」と思うかもしれませんが、トランザクション手数料の報酬は残りますし、その頃には希少性によりビットコインの価値は十分高くなっていると考えられるため、マイニングは引き続き行われるものと考えられています。
最初の攻撃成功者はサトシ・ナカモトだった!
セキュリティ問題の1つに51%攻撃というものがあります。
これはハッシュレートの51%を特定のマイナーが占めると、取引承認を自在に操れるようになるという問題です。
ビットコインには最長のチェーンが正しいというルールがあるため、51%のハッシュレートを持っていれば、意図的にチェーンを分岐させて一番長くすることが可能になり、正規なチェーンとみなされるようになってしまいます。
そうなると、過去の取引を自由に無効化して二重払い問題を引き起こせるようになってしまい、ブロックチェーンの信頼がなくなります。
そうならないようにするためには、マイナーの集中化を防ぐ分散化やハッシュレートの強化が重要になります。
ただ、経済合理性を考慮すると、51%攻撃はそう簡単に起こるものではありません。
なぜなら、51%攻撃を仕掛けて成功した場合、その通貨の信頼性が疑われ、価値が落ちてしまい、最悪そのブロックチェーンは崩壊します。
そんなことをするよりも正直なマイナーとして活動した方がコインを獲得できて利益を最大化できるというわけです。
しかし、特定の暗号資産の存在自体を潰す目的あるいは愉快犯的な動機で51%攻撃を仕掛けられた暗号資産の事例は実在しますので、過信は禁物です。
余談になりますが、ビットコインのネットワークを最初に攻撃して成功させたのは考案者であり開発者でもあるサトシ・ナカモト本人だったという面白いエピソードがあります。
そこにはやむを得ない事情があったのですが、詳しくは樋口 匡俊さまが投稿された記事「ビットコイン論文からさぐる ブロックチェーンのヒント」に書かれていますので、ビットコインの歴史に興味がある方はぜひご覧ください。
この一連の記事を読むと、サトシ・ナカモトも一人の普通の人間なんだなと思えます。
決済完了には6ブロックの承認を待つ必要がある
ビットコインをはじめとするPoWを用いた暗号資産では、決済が完了するまで6ブロックの承認(約1時間)を必要とすることが多いです。
取引所から送金しても着金するまでに1時間以上かかるのはそのためです。
なぜ、6ブロックの承認を待つのかと言いますと、上記の51%攻撃の成功確率がほとんど無視できるようになるためには6ブロックの承認が必要となるからです。
6ブロック承認後に不正なチェーンを伸ばして既存の正しいチェーンを追い抜ける確率は0%近くになるため、実務上は問題ないだろうという判断です。
決済完了が確率論で成立することから、確率的ファイナリティと呼ばれます。
ビットコイン(BTC)の課題
スケーラビリティ問題
ビットコインのブロックサイズは1MBと小さいため、人気が高まるにつれてトランザクションは常に停滞するようになり、送金に時間がかかるという問題がずっと起きています。
これをスケーラビリティ問題と呼びます。
トランザクション手数料にチップを上乗せすることで取引承認の順番を早めることができるのですが、競争原理が働いてチップ代が高くなり、トランザクション手数料が高騰する傾向があります。
スケーラビリティ問題は手数料が高くなる上に送金が遅くなるという致命的な問題になり得ます。
環境問題
ビットコインのマイニングには膨大な計算が必要なため、たくさんの電気エネルギーを消費します。
これまで中国がビットコインのマイニングの主体であり、中国では石炭などの化石燃料への依存度が高いため、CO2の排出に繋がり、地球環境によろしくないと言われてきました。
しかし、2021/5に中国は暗号資産を全面禁止したことで、マイナーたちは全世界に飛び散りました。
また、環境問題が注目されるようになってから、クリーンなエネルギーを使ったマイニングも増えてきています。
そもそも、電気エネルギーを過剰生成して余って捨てていた国や地域にとっては、マイニング事業はちょうどよいユースケースになっており、エネルギーの無題使いという主張は必ずしも適切とは言えません。
暗号資産市場の活況を良しとしない一部の人間が「暗号資産は環境に悪い」というネガティブなイメージを植え付けようとしている可能性もあるため、フラットな姿勢で状況を観察する方がよいでしょう。
法整備が追い付ていない
暗号資産は誕生して10年足らずの市場のため、各国の法整備や規制が追い付いていません。
それに加えて、国を跨いだ送金が簡単、匿名性があるといった性質から詐欺師やマネーロンダリングにとって都合のいい存在になっています。
しかし、市場が成長するに連れて徐々に法整備・規制は整うでしょうし、犯罪防止の仕組みも出来上がってくると予想されます。
ボラティリティが高い
ビットコインに限りませんが、暗号資産(仮想通貨)には資産の裏付けがなく、かつ株式や債券に比べれば市場規模がまだまだ小さいため、大きなニュースが流れると50%程度は簡単に上げ下げします。
また、暗号資産の愛好家で世界一の富豪であるイーロン・マスク氏のツイッターの発言に翻弄されることもあります。
ただ、このボラティリティの高さが逆に夢を与えているケースもありますので、一概に否定できるものではないでしょう。
ビットコイン(BTC)の今後の展望
ビットコインの最初期は無価値なものでしたが、2010/5にピザ2枚10,000BTCと交換できるようになり(ビットコイン・ピザ・デーと呼びます)、誕生してわずか12年で、小国とは言え一国の法定通貨にまでなりました。
ビットコインの先物ETFが承認され始めていますが、現物ETFが承認されるようになれば、機関投資家の資金もどんどん暗号資産市場に流入するようになると予想されます。
ビットコインの少額高速低料金決済を実現できるライトニングネットワーク等のビットコイン周辺技術は日々進化していますし、ビットコイン本体も継続的にアップグレードが行われています。
そのため、長期で見れば、ビットコインの価値はまだまだ高まっていくのではないでしょうか?