リップル(XRP)の概要
金融機関の国際送金の問題を解決することをミッションとする企業
リップルは、超低コストかつ超高速な金融機関向けの国際送金プラットフォーム「RippleNet」を開発、運営している会社とその関連技術の総称です。
従来の国際送金はコルレス銀行と呼ばれる中継役の金融機関を経由して行われますが、ドルのようなメジャーな通貨であったとしても、数千円程度の手数料が発生します。
マイナーな通貨の場合は、複数のコルレス銀行を経由することになり、結果として手数料が非常に高額になる問題が起きていました。
また、コルレス銀行間の時差による営業時間のずれ等によって手続きが滞るため、送金に費やす時間も早くても2~3営業日は覚悟しなければなりません。
複数の金融機関を経由する中で連携がうまくいかずにきちんと送金されないトラブルが起きることもあります。
このように、国家を跨いだ送金は非常に時間がかる上に高額の手数料を取られる状態が続いていました。
そこで、リップル社はこの問題を解決するために、RippleNetと呼ばれる金融機関向けの新たな国際送金プラットフォームを開発しました。
RippleNetを使うことで驚くほど速く、そして安い国際送金が可能となります。
リップルはリップル社という一企業によって開発されており、金融機関(法人)をターゲットにしている点がビットコインやイーサリアムと大きく異なる点です。
リップル社の目標は価値のインターネットの実現
カナダのライアン・フッガー氏は2004年にリップルの基礎となるリップル・ペイメント・プロトコルを考案しました。ビットコインが発表される2008年より4年も前のことです。
2011年には、ビットコイン取引所「Mt.Gox」創業者のジェド・マケーレブ氏が、ビットコイン技術を応用したコンセンサスアルゴリズムをそのプロトコルをもとに考案し、独自のブロックチェーン「XRP Ledger」の前身となるコンセンサス・レジャーを開発しました。
その翌年、ライアン・フッガー氏は、クリス・ラーセン氏、ジェド・マケーレブ氏らにプロジェクトを譲渡しました。
彼らは同年9月にアメリカに本拠を置くリップル社(当時はOpenCoinという社名)を設立し、RippleNet等の総合ソリューションを開発していきます。
リップル社は、通貨(法定通貨、暗号資産問わず)ごとに異なる決済プロトコルをグローバルで統合し、あらゆるお金(価値)を安価かつ高速に世界中に届けられる「価値のインターネット」を目指しています。
価値のインターネットに向けて、リップル社の提唱する異なる台帳または送金ネットワーク間で価値(通貨)を移動するための標準規格であるインター・レジャー・プロトコル(ILP)を国際標準規格にすべく、ウェブ標準化を推進する非営利団体であるW3C(World Wide Web Consortium)が中心となって開発しています。
リップル(XRP)早見表
名称 | リップル(Ripple) |
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ティッカーシンボル | XRP |
通貨の最小単位 | 1 drop = 0.000001 XRP |
メインネット開始年月 | 2012 |
主な用途 | 金融機関による国際送金のブリッジ通貨 |
考案者 | ライアン・フッガー氏 |
発行者 | ジェド・マケーレブ氏をはじめとする3名の開発者 ※ジェド・マケーレブ氏はかの有名なビットコイン取引所「Mt.Gox」創業者 |
発行方法 | 個別送付 |
発行上限 | 1,000億XRP(すべて発行済) |
トランザクション速度 | 1,500 TPS(1秒あたりのトランザクション数) ※VISAは1,700 TPS |
コンセンサスアルゴリズム | XRP Ledger Consensus Protocol(プルーフ・オブ・コンセンサス:PoCと呼ぶ人も) |
ファイナリティの種類 | 決定論的ファイナリティ(決済が確定し、覆されることがない) |
残高管理 | アカウントモデル |
Webサイト | https://ripple.com/ https://xrpl.org/ |
ホワイトペーパー | https://ripple.com/files/ripple_solutions_guide.pdf https://ripple.com/files/ripple_consensus_whitepaper.pdf |
エクスプローラー | https://livenet.xrpl.org/ |
リップル(XRP)の特徴
超高速・超低コストで送金可能
XRPを用いた送金にはほとんど時間も手数料もかかりません。送金時間は数秒で、手数料も1円未満です。
この超高速・超低コスト送金を支えているのがXRP Ledger Consensus Protocolと呼ばれる独自のコンセンサスアルゴリズムです。
当プロトコルでは、バリデーターと呼ばれる検証・承認サーバー間の多数決(80%以上)によって、数秒ごとにトランザクションの順序と結果について合意が形成されます。
ビットコインのプルーフ・オブ・ワーク(PoW)のような時間のかかる作業を必要としないため、毎秒1,500件のトランザクションを処理することができ、4秒という高速な送金が可能になっています。
XRPは超高速・低コスト(出典:リップル公式サイト)
2021/12現在、アクティブなバリデーターは120を超えており、主なバリデーターは金融機関、大学、取引所等ですが、誰でもコードを実行することでバリデーターになることができます。
しかし、誰でもなれるからこそ、信頼を担保する必要があります。そのため、現在は運用されているバリデーターのデータの履歴をもとに、リップル社が信頼できるバリデーターを認定しています。
その認定されたバリデーターのリストのことをユニーク・ノード・リスト(UNL)と呼びます。
将来的には、バリデーターの運用データに基づいてネットワークの参加者自身がリストを選べるようになることで、Ripple社がこのプロセスから退くことを目指しています。
そして、ビットコインには取引承認の報酬として新規発行されるビットコインと取引手数料を手に入れられますが、リップルのコンセンサスアルゴリズムにはそのような経済的インセンティブはありません。
経済的インセンティブがない=マイナー報酬が不要となるため、送金コストを抑えることができるのです。
余談になりますが、トランザクション手数料は焼却(バーン)されるように設計されているため、ごく少量のXRPがトランザクションごとに市場から消滅しています。
XRPの新規発行はないため、デフレ通貨と言えるかもしれません。ただ、莫大な量のXRPを元々発行しておりますので、極めて緩やかなデフレです。
RippleNet上で価値交換の際に使われるブリッジ通貨「XRP」
RippleNet内ではオンデマンド流動性(ODL)と呼ばれる送金サービスを使うことで、コルレス銀行の中継が不要になり、高速かつ安価な送金が可能になります。
オンデマンド流動性(出典:リップル公式サイト)
ODLでは、送金側が自国の通貨をXRPに交換した上で送り、受取側では受け取ったXRPを自国の通貨に再度交換して受益者(Beneficiaries)に転送します。
上図では米ドルを送ってメキシコペソを受け取っていますが、XRPが異なる通貨の橋渡しとなるブリッジ通貨になっていることが分かります。
XRPを介した送金にはILPが使われており、そのトランザクションはXRP Ledgerに記録されます。
上図のぐるっと円を描いている部分がその部分を表しています。
なお、XRPは「リップル」と呼ばれることが大半ですが、正式名は「エックス・アール・ピー」です。
世界55ヶ国、数百社の金融機関がRippleNetを採用(日本ではSBIホールディングス等)
送金が速くて手数料も安いとなれば、金融機関にとって魅力的な存在です。Ripple公式サイトによれば、RippleNetには世界55ヶ国以上の数百社の金融機関が参加しているそうです。
世界中の金融機関がRippleNetを採用(出典:リップル公式サイト)
これほどの参加者を集められたのは、Rippleという「一企業」が管理しているネットワークだからこそかもしれません。ビットコインのような非中央集権のネットワークの場合、責任の所在が不明確になりますから、顧客の資金を預かっている金融機関としては安心して使うことが出来ないのでしょう。その反面、「XRPは中央集権寄りの暗号資産(仮想通貨)」と言われる理由もここにあります。
リップル社は世界中の金融機関と提携することで、RippleNetの拡大を目指して活動しています。
RippleNetの参加企業の1社であるSBIホールディングスは、SBI Ripple Asiaというジョイント・ベンチャーをリップル社と共同で設立し、アジア地域でのRippleNetの普及活動に取り組んでいます。
上限1,000億XRPを既に発行済
XRPの発行量は1,000億XRPに設定されており、初期の段階で全て発行済です。マイニングやステーキングという概念はありません。
ジェド・マケーレブ氏らは2012/9に800億XRPをリップル社に贈呈し、リップル社はそのXRPを売却することで運転資金を調達し、エコシステムを拡大してきました。
その後、リップル社は2017年に保有する550億XRPをエスクローに預けてロックアップしました。ロックアップとは、市場に出回るXRPの量を管理するための供給量制限のことです。
エスクローはリップル社の都合でロックアップを自由に解除できない仕組みになっています。
ロックアップは毎月解除され、リップル社はその一部を都度売却するとともに、新たなXRPを市場に供給しています。なお、売れ残ったXRPは再度ロックアップされます。
リップル社は四半期ごとにXRP Markets Reportを作成し、エスクローに預けられているXRPの売却状況等を一般公開することで、透明性を確保しています。
毎年開催される大型イベント「Ripple Swell Global」
リップル社は2017年から毎年10〜11月ごろにSwellと呼ばれる国際会議を2〜3日間にわたって開催しています。2020年からは新型コロナウィルスの影響でオンライン形式となっています。
Swellでは著名人を招集し、金融の未来等について語ってもらいます。もちろん、リップル社関連の最新ニュースもここで発表されます。
内容もさることながら、このイベントで注目すべきはXRPの価格動向です。
実はSwellの開催前に価格が上がり、実際に開催され始めると価格が下落するという傾向があります。
「噂で買ってニュース(事実)で売れ」という典型的な動きをしており、XRP保有者は色んな意味でSwellに注目しています。
独自トークンの発行が可能(エアドロップが豊富)
XRP Ledgerを使って、独自トークン(オリジナルのコイン)を誰でも発行できます。
リップルの公式アプリ「XUMM wallet」とXUMMサイト「XUMM community」を併用し、XUMM walletで各トークン用のトラストライン(専用線)を設定することで、独自トークンを無料で手に入れられるチャンスがあります。
XUMM walletを使うには初回に限り10 XRPの利用料が必要です。
そして、各トラストラインの設定には2 XRPの一時ロックと0.000012 XRPのトランザクション手数料が必要になります。
ロックした2 XRPはトラストラインを削除すれば返還されます。ただし、返還されるには受け取った独自トークンを0にしておかなければなりません。
独自トークン発行元のプロジェクトによっては10万円近いトークンをエアドロップすることもあります。
リップル(XRP)の課題
XRPが有価証券か否かを巡るSECとの訴訟問題
2020/12/23、アメリカ証券取引委員会(SEC)はリップル社等に対して訴訟を起こしています。
訴訟内容は「2013年から7年間に渡って、有価証券登録していない暗号資産(XRP)を販売して資金を調達した」というものです。
SECからすれば、「リップル社という運営組織がいて、そこが発行する金銭的価値のあるXRPは株や社債と同類なはずだ」というわけです。
当然、リップル社はこれに反論し、徹底的に戦う姿勢を見せています。
この訴訟をきっかけに、XRPがCoinbaseなどの複数の取引所から上場廃止されました。
2021/12現在も裁判は続いており、その不透明さからXRPの価格はなかなか上がらない状況が続いています。
バリデーターの数が少ない
上記で述べた通り、トランザクションの承認に経済的インセンティブが働かないため、バリデーターの数が非常に少ないという問題があります。
数が少なければ、それだけネットワークの安定性に懸念が残ります。
リップル社の承認が必要とはいえ、信頼できるバリデーター(UNL)が悪意ある行動を起こさないとも限りません。
バリデーターを増やしてさらなる分散化を図り、ネットワークの安定性とセキュリティを強化していくことが求められています。
リップル社の収入源がXRPの売却に依存
リップル社のブラッド・ガーリンハウスCEOは、インタビューの中で「XRPを販売しなければ会社の利益がでない」と答えており、金融機関等に販売しているXRPの売上が利益の大半を占めていることを認めています。
リップル社のXRP売却への依存体質を改善していかなければ、XRPは不健全な暗号資産とみなしている一部の投資家の理解を得ることはなかなか難しいでしょう。
SWIFTとの競争
従来の法定通貨の国際送金には、国際銀行間通信協会(SWIFT)の提供するシステムを介して行われるのが一般的です。
つまり、SWIFTはリップル社にとって強力なライバルです。
そのSWIFTは、暗号資産の台頭を受けてか、小口の国際送金を低コストかつ迅速に行える新サービス「SWIFT Go」の提供を2021/7に開始しました。
今後、世界の金融機関はどちらのサービスを中心に据えるのか、注目が集まります。
リップル(XRP)の今後の展望
RippleNetは金融機関向けの国際送金問題を解決するために作られているだけあって、超高速・超低コストで送金できます。実際に使ってみれば、驚くほどの早さと安さを体感できるでしょう。
世界中の金融機関との提携拡大(直近ではエジプト国立銀行やタイ大手のアユタヤ銀行など)も順調に進んでいます。
しかし、その一方でリップル社という一企業の管理するネットワークのため、中央集権を嫌う一部の暗号資産投資家からはあまりよく思われていません。
加えて、SEC裁判が勝訴という形で決着しない限り、大きな価格上昇を見込むのは難しいかもしれません。「和解の道はない」とリップル社は宣言しているため、勝つか負けるかのどちらかとなります。
とは言え、ポテンシャルは十分ありますので、SECとの訴訟で勝つことさえできれば、Coinbase等への再上場にも繋がり、一気に急騰する可能性はあるでしょう。
SEC裁判の今後の動向に要注目です。