ソラナ(SOL)の概要
新進気鋭の超高速DAppsプラットフォーム
ソラナは、高い処理性能を持った分散型アプリケーション(DApps)を構築できるプラットフォームです。
ビットコインやイーサリアムのような従来のブロックチェーンは、ネットワーク規模拡大に伴うトランザクション遅延、いわゆるスケーラビリティ問題に悩まされてきました。
そこで、アメリカの移動体通信技術および半導体の設計開発を行うクアルコム社出身のアナトリー・ヤコヴェンコ氏は、プルーフ・オブ・ヒストリー(PoH)と呼ばれる、トランザクション順序付けプロセスを自動化した独自のタイムスタンプ技術を2017年に考案しました。
そして、5名の仲間とともにSolana Labsを立ち上げ、PoHを用いた高いスケーラビリティを持ったブロックチェーンであるソラナを開発しました。
Proof of Historyの説明動画(出典:Youtube公式)
ソラナはイーサリアム同様、分散型アプリケーション(DApps)を構築できるプラットフォームです。
ただ、処理性能は段違いで、2021/12現在のイーサリアムは1秒あたり25トランザクションしか処理できないのに対して、ソラナは50,000トランザクションも処理することが可能です。
メインネットのベータ版が稼働したのは2020/3のことですが、わずか2年弱で時価総額5位に上り詰めるほどの勢いのあるプロジェクトです。
なお、Solana Labsは2018年創業で、拠点はアメリカのサンフランシスコのベイエリアにあります。当初Loomという名称でしたが、同様の名前の他プロジェクトとの混同を避けるために、Solana Beachにちなんでソラナに改名しました。
開発を手掛けるSolana Labs以外にも、プロジェクトの方向性等を決めるソラナ財団が存在しており、明確な役割分担を行っています。
ソラナ(SOL)早見表
名称 | ソラナ(Solana) |
---|---|
ティッカーシンボル | SOL |
通貨の最小単位 | 1 lamport = 0.000000001 SOL |
メインネット開始年月 | 2020/3 |
主な用途 | 分散型アプリケーション(DApps)のトランザクション手数料の支払い ステーキング |
考案者 | アナトリー・ヤコヴェンコ氏ら6名 |
発行者 | ソラナ財団(ICO時のみ) |
発行方法 | ICOで配布後はステーキング |
トランザクション速度 | 50,000 TPS(1秒あたりのトランザクション数) ※VISAは1,700 TPS |
発行上限 | なし |
コンセンサスアルゴリズム | デリゲーテッド・プルーフ・オブ・ステーク(dPoS) ※厳密にはTower BFT |
ファイナリティの種類 | 決定論的ファイナリティ(決済が確定し、覆されることがない) |
残高管理 | アカウントモデル |
Webサイト | https://solana.com/ja |
ホワイトペーパー | https://solana.com/solana-whitepaper.pdf |
エクスプローラー | https://explorer.solana.com/ |
ソラナ(SOL)の特徴
トランザクション処理が極めて早くて安い
最大の特徴は冒頭で述べた通り、トランザクション処理速度の早さです。
50,000 TPSを誇っており、他の主要なブロックチェーンよりも大幅に上回っています。
この速さの源はPoHを使った非同期での合意形成にあります。
通常のブロックチェーンは合意形成にノード間での同期が必要なのですが、ソラナではそれを非同期にできる点が大きな特徴です。
トランザクションを承認するバリデーターのハードウェアを高速化すれば、この性能をさらに引き上げることができると言われています。
この高いスケーラビリティを支えているのが、PoHをはじめとする8つの革新的なコア技術です。
- Proof of History(PoH): コンセンサス前の時計
- Tower BFT:PoHに最適化されたビザンチン将軍問題解決
- Turbine:ブロック伝搬プロトコル
- Gulf Stream:メモリプールが不要なトランザクション転送プロトコル
- Sealevel:スマートコントラクトの並列実行
- Pipelining:検証最適化のためのトランザクション処理ユニット
- Cloudbreak:水平方向にスケーリングされたアカウントデータベース
- Archivers — 分散型台帳ストア
というより、速さのコンセプトとして非同期での合計形成があり、そのためには何が必要かを逆算して生まれたのがこれらの技術になります。
また、これらの技術のおかげでトランザクション手数料も非常に安く済み、1トランザクションあたりの手数料はわずか$0.00025です。
公式サイトには「$0.01未満にとどまることを保証」と書かれています。
トランザクションがオンチェーンで完結するため、透明性が高い
ソラナはイーサリアムと同じレイヤー1のブロックチェーンです。
イーサリアムでは、イーサリアムのブロックチェーン上で全てのトランザクションを処理しようとすると、時間と手数料がかかり過ぎてしまうスケーラビリティ問題が発生します。
その問題を回避するために、レイヤー1のブロックチェーンの外側にあるレイヤー2(オフチェーン)でトランザクションの一部を処理するソリューションが存在します。イーサリアムのレイヤー2ソリューションとしては、ポリゴン(Polygon:MATIC)が有名です。
しかし、レイヤー2を使う場合、トランザクションの全てがレイヤー1のブロックチェーンに書き込まれなくなるため、透明性がやや欠けてしまいます。
これに対して、ソラナはレイヤー2等を利用することなく、全てのトランザクションがソラナのブロックチェーン(オンチェーン)上で完結できるため、透明性を担保できるのです。
SPLで独自トークンを作成できる
ソラナにはソラナプログラムライブラリ(SPL)があり、その中にRust言語で記述されたトークンプログラムというプログラムがあります。
このトークンプログラムを使うと、イーサリアムのERC20トークンのように、SPL規格の独自トークンを作成することが可能です。
急速に拡大するエコシステム
独自トークンとスマートコントラクトにより、ソラナのエコシステムはメインネットのベータ版が稼働して以来、急速に拡大しており、まだ2年も経過していないにもかかわらず、2021/12時点で879個ものプロジェクトが存在しています。
ソラナのエコシステムの一例(出典:ソラナ公式サイト)
また、ソラナは2021/8にNFTプロジェクト「Degenerate Ape Academy」を立ち上げ、NFT業界に参入しました。
エコシステムの中からいくつか有名なプロジェクトをピックアップして紹介します。
- USDT/USDC:主要ステーブルコインであるテザー社のUSDT、サークル社のUSDCがソラナに対応。
- Chainlink:ブロックチェーンにオラクル(天気等の外部データ)を提供するプラットフォーム。
- Arweave:永続的なストレートソリューション。
- Audius:SpotifyやLINE MUSICのような音楽ストリーミングサービス。
- Serum:暗号資産デリバティブ取引所「FTX」が開発した分散型取引所(DEX)。
- Raydium:自動マーケットメーカー(AMM)型の分散型取引所(DEX)。Serumのオンチェーン流動性プロバイダー。
- Star Atlas:大規模マルチプレイヤーオンラインメタバースを備えた、宇宙をテーマにしたブロックチェーンゲーム(GmeFi)。
- Phantom:ソラナやSPLトークンを管理する人気ウォレットの1つ。
- Solflare:ソラナやSPLトークンを管理するウォレットの1つ。
これだけ多くのプロジェクトを惹き付ける魅力がソラナにはあるのです。
ステーキングによる金利収入を得られる
ソラナはコンセンサスアルゴリズムとしてデリゲーテッド・プルーフ・オブ・ステーク(dPoS)を採用しています。
トランザクションを承認するバリデーターにネイティブ通貨であるSOLをステークする(この文脈では委任を意味する)ことで、金利収入を得られます。
SOLのインフレ率は、初期 8%から始まり、10年かけて 1.5%まで低下するように設計されています。
ソラナのインフレ率は徐々に低下(出典:ソラナ公式サイト)
そのため、ステーキングの利回りもそれに合せて減少していきます。
ソラナのステーキング利回りも徐々に減少(出典:ソラナ公式サイト)
SOLのステークされた量で利回りに幅がありますが、2021/12現在は2 Yearsより少し手前になるため、年利で6.5%~9.5%程度ということになります。
年次イベント「BREAKPOINT」の開催
ソラナ財団は、BREAKPOINTと呼ばれる年次イベントをリスボンにて2021/11/7~11/10の4日間にわたって開催しました。
これが第1回目の開催となります。
BREAKPOINTでは主要なスピーカー(例えばFTXのCEO、通称アフロ氏など)を招待してスピーチしてもらったり、エコシステムの将来に関する重要な発表が行われたりします。
ブロックチェーンの相互運用性(予定)
ソラナは、他のブロックチェーンと相互運用できる仕組みを画策しています。
ソラナはまず、2020/10にイーサリアムのブロックチェーンと相互に接続するブリッジであるワームホール(Wormhole)を発表しました。
ワームホールは両ブロックチェーンの橋渡しとなって、取引所を介さずともイーサリアム(ETH)やERC20トークンをSPLトークンに交換したり、その逆も行えるようになります。
イーサリアム以外のブロックチェーンともブリッジを構築しようと取り組んでいます。
ソラナのイーサリアムブリッジ「ワームホール」(出典:ソラナ公式ブログ)
ソラナ(SOL)の課題
メインネットはまだベータ版であり、安定性に不安が残る
ソラナのメインネットは2020/3に稼働したばかりで、まだベータ版です。
過去に20時間にわたるネットワークダウン障害を起こしたり、1時間あたり30億円の資産が盗まれるリスクのあったバグが見つかったりと安定性にやや不安が残ります。
20時間のネットワークダウン障害
2021/9/14、RaydiumでのIDO前後にソラナのRPCサーバーに高い負荷がかかり、同サーバーを利用するソラナのサービスに障害が発生し、ネットワークがダウンしました。
20時間後、サーバーの再起動により復旧しました。
ソラナは「ネットワークのリソース消耗(過度なトランザクション数)がサービス停止の原因」だと説明しています。
参考:https://news.yahoo.co.jp/articles/45b082f26f6650040a5bb9aa7732d67e6316d491
参考:https://coinpost.jp/?p=276723
1時間あたり30億円の資産が盗まれるリスクのあったバグ
2021/12/3(時差の関係で日本人のツイッターには12/4と表示)にNeodyme社のセキュリティ研究者はSPLのトークンレンディングのコントラクトの致命的なバグにより、複数のソラナプロジェクトから1時間あたり2,700万ドル(約30億円)の割合で資金を盗めるリスクがあったことを発見しました。
We recently discovered a critical bug in the token-lending contract of the solana-program-library (SPL). This blog post details our journey from discovery, through exploitation and coordinated disclosure, and finally the fix.
— Neodyme (@Neodyme) December 3, 2021
Neodyme社のブログによると、このバグは2021/6にNeodyme社の監査役の一人であるサイモン氏によって、GitHubに公開されたものの放置されたままでした。
サイモン氏は、2021/12/1になってもバグが修正されていないことに気づき、Neodyme社のセキュリティ研究者は、バグを悪用できるかのテストを実施した結果、小額の資金を盗める可能性があることに気づきました。
研究者はすぐに、このバグの影響を受けていると思われるいくつかのプロジェクトに連絡を取り、それぞれがバグを修正したことで、事なきを得たようです。
一貫性のない透明性レポート
ソラナ財団は、前月のトークンアクティビティ、翌月の予定等を明らかにするために、透明性レポートを2020/6から毎月発行していました。
しかし、このレポートは2020/12を最後に配布を停止してしまいました。
調べた限り、ソラナ財団は透明性レポートの配布を中止した理由について公式声明を発表していないようです。
分散性が高いとは必ずしも言えない
2021/12現在、ブロックの承認を行うバリデーターの数は1,300程度です。
リップルやステラルーメンの100よりはずっと多いですが、イーサリアムの24万を超えるバリデーターと比較するとずっと少なく、分散化は中程度といった印象です。
バリデーターの数がそこまで伸びていない原因の1つは、バリデーターノードを実行するための高いハードウェア要件にあるかもしれません。
とは言え、まだ稼働して2年経っていませんので、イーサリアムの現在のバリデーター数とそのまま比較するのはフェアではないでしょう。
加えて、バリデーターの数も増加傾向にあります。
認知度と信頼度が高まるにつれて、バリデーターの数も増えて高い分散性が得られる可能性は十分あります。
ソラナ(SOL)の今後の展望
ソラナは、多くのブロックチェーンが抱えるスケーラビリティ問題を独自の技術で解決しているブロックチェーンです。
ベータ版による安定性の懸念はあるもの、その優れた性能ゆえ、今後も多くのプロジェクトを惹き付け、エコシステムを拡大していくでしょう。
事実、イーサリアムからソラナに移行しているプロジェクトも複数存在しています。
エコシステム拡大に伴って、SOLの価値が高くなると考えることは自然なことです。